今日は釧路自然保護協会、NPO法人環境把握推進ネットワークPEG、一般社団法人野生生物生息域外保全センター、北海道爬虫両棲類研究所、ザリガニと身近な水辺を考える会で構成する「キタサンショウウオの保全を願う有志団体一同」で北海道教育局に対し、キタサンショウウオを北海道の天然記念物への指定を要望しました。

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キタサンショウウオの北海道指定天然記念物への指定を求める要望書
北海道教育委員会
教育長 中島俊明 様
拝啓、貴職におかれましては、道民の自然環境保全と文化財保護の推進にご尽力賜り、深く敬意を表します。
さて、私たちは、北海道に生息する絶滅危惧種「キタサンショウウオ(Salamandrella keyserlingii)」について、その生息環境の急激な変化と、地域間での保護体制の不統一を強く懸念し、道による統一的な保護のため、本種を北海道指定天然記念物とするよう、ここに要望いたします。
キタサンショウウオは世界で最も広く分布する両棲類でありながら、日本国内においては釧路湿原、上士幌町、国後島に局所的に分布するのみであり、日本の個体群は大陸から地理的に隔離されており、独自の進化を遂げた遺伝的系統とされています。また、これまでに行われた遺伝的研究によって、北海道内の個体群間にも多様性があり、地域ごとの遺伝的特異性が高いことが報告されています。このような孤立的で遺伝的にユニークな個体群は、生物多様性の保全において極めて重要です。また、本種は日本と大陸が陸続きだった時代(氷河期)に北方から南下し、分布を維持してきた種であり、北海道と大陸との地史的つながりを示す証人(氷河期の遺存種)といえます。加えて、北海道の成立と種分化史を示す重要な証拠と言え、学術的に極めて貴重な生物です。加えて、本種は北海道の自然や生態系の象徴的な存在であり、地域の自然教育や環境保全活動のシンボルにもなっています。実際、釧路市・標茶町・上士幌町では天然記念物に種指定され、地域住民の自然観や郷土への誇りに深く結びついていることがうかがえ、文化的な価値も有しています。
上述の通り、本種は釧路市・標茶町・上士幌町の3市町においては既に地域指定天然記念物として保護されていますが、同様に分布が確認されている釧路町や鶴居村などでは未だ指定がなされておらず、地域ごとの保護規制にばらつきが生じています。こうした不統一な状況は、市町村を越えて移動・分布する本種にとって、一貫した保全体制の構築を困難にしており、大きな課題となっています。
さらに近年では、道内各地における太陽光発電施設の開発が急増し、本種が主に生息する湿原環境の改変・喪失が深刻化しています。これに伴い、環境省は2020年のレッドリスト改訂において、キタサンショウウオのランクを従来の「準絶滅危惧(NT)」から「絶滅危惧IB類(EN)」へと、2段階引き上げました。この評価は、本種がかつてない危機に直面していることを示しており、今こそ道としても強い保全姿勢を示す必要があると私たちは考えます。
道内におけるキタサンショウウオの生息地を対象とした広域的かつ統一的な保護措置を講じるためにも、北海道指定天然記念物とすることが必要不可欠です。本種の生息環境を将来にわたり保全し、北海道の誇るべき遺産として継承していくため、何卒前向きなご検討を賜りますよう、お願い申し上げます。
絶滅危惧種でもあり、学術的にもその存在は非常に重要でもあることから、その生息域を守ることが重要となります。
残念なことに、今話題のメガソーラー建設計画が進む釧路湿原南部の市街化調整区域のほとんどがキタサンショウウオの生息地及び生息適地となっています。
今後は生息している釧路市のほかの自治体(釧路町、標茶町、鶴居村、上士幌町)とも連携しながら、活動を展開することになると思います。