北海道 釧路の地酒 『福司』 若僧蔵人の醸し屋日記 - 記事一覧
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| 発行日時 | 見出し |
|---|---|
| 2025.11.21 |
すっかり油断していた話
仕込みが始まって約一か月。
日々データを取りながら、1本、また1本とタンクが立ち上がっていきます。 年末に仕込む出品用の純米酒についても、 各担当と打ち合わせを進めています。 取材の際に「どうやって打ち合わせしているんですか?」と聞かれることがあります。 正直、“そこ?”と思うこともあります。 多くの仕事がチームで動くのは当たり前ですし、 企画職であれば普通にやっていることだからです。 しかし、酒造りの世界では、今なお“杜氏制”が中心の蔵もあります。 杜氏制は決して悪いわけではありません。むしろ、すごい制度です。 杜氏とは、 総合プロデューサーであり、現場監督であり、トップエンジニア。 本来なら複数人で分担して成立する専門職を、一人で背負っています。 そして、すべての判断を下し、すべての責任も負う。 昔は人徳のある杜氏が腕のいい蔵人をスカウトし、 チームを組んで蔵に入ったものです。 映画に例えるなら── アルマゲドンで主人公が“最高の掘削チーム”を集める、 あのイメージに近いでしょう。 福司も以前は杜氏制でしたが、 現在は社員主体の“チーム醸造”へ移行しました。 変化のスピードが速い時代に、ひとりの名人芸に頼るよりも、 複数人で知恵と技術を積み上げる方が、品質も安定し、 育成もしやすいと感じています。 人材が潤沢だった時代は「優秀な一人」を育てればよかった。 でも今は、そもそも働き手の確保が難しい。 だからこそ、負担を分け合い、得意分野を持ち寄り、 リーダーが全体を束ねる仕組みが必要なのです。 杜氏という“努力・忍耐・センス・責任”が詰まった仕事に 憧れて入る若者は、もう多くはないでしょう。 それよりも、楽しく・誇りを持って酒を造れる場所を作りたい。 福司では、全体ミーティングを行うこともありますし、 賄いの時間に共有することもあります。 LINEやクラウドでデータ共有もします。 ただし基本は、まず私が大枠のシナリオを描き、 そのシナリオを皆の専門知識で補強してもらう形です。 「どんな未来を描きたいのか」 「どんな酒質を目指すのか」 「どの意見がほしいのか」── これを明確にすることで、各担当が自分の経験や知識、 文献を駆使して意見を持ち寄れる。 ミーティングというより、 専門家同士の小さなディスカッションの連続と言った方が近いでしょう。 大きな挑戦はすでにメンバーに説明済みで、 それぞれが自分の強みを活かして動き始めています。 一人では壁にぶつかって止まる場面でも、 複数人いれば必ず突破口が生まれる。 これがチーム醸造の強さです。 いくつか行っている試験の一つが、しぼりたて生酒での新技法。 今年は酒質がぐっと上がるはず──そんな手応えを感じています。 どう仕上がるか、楽しみにしていてください。 さて、今日はすっかり油断していた話を。 実は私、今日が誕生日でした。 休憩時間に事務所へ戻ると、突然あの“誕生日の歌”が。 まさか準備してくれているとは思っておらず、 びっくりすると同時にとても嬉しくなりました。 ![]() みんなでケーキを囲む時間は、仕込みの時期ほど貴重です。 このメンバーと働けていること、誇らしく思います。 写真に写っているのは、 ケーキを撮っている私を手伝おうとしてくれたナノイーの手。 「片手だと大変でしょう」と、自然にサポートしてくれる。 その優しさも残したくて、この写真を選びました。 最後にひとこと。 忙しい時期に、本当にありがとう。 ![]() 過去を想い、未来を仕込む。 北海道白糠町の「極寒ぶり」と 釧路市の地酒「五色彩雲」が100年先の食文化を共創 」」」」」」」」」」」」」 SNS情報 」」」」」」」」」」」」」」 ● 福司酒造 製造部(公式)Twitter: @fukutsukasa_ ● 醸し屋のInstagram : @fukutsukasa.kazuma ■五色彩雲ブランドページ URL:https://goshiki-no-kumo.com/ ■五色彩雲Noteページ URL:https://note.com/goshiki_no_kumo ![]() ■ 採用情報はコチラから 五色彩雲シリーズのお取り扱い店舗はコチラからどうぞ。 |
| 2025.11.20 |
福司×料理で見えた、日本酒ペアリングの未来
あっという間に11月も20日となりました。
もうお正月まで50日を切っていますが、皆さん準備はされていますか? 先日(少し前になりますが)、釧路市内で SAKE DIPLOMA の資格を持つ方が、 福司と料理のペアリング会を開催してくださるということで、 醸し屋も参加させていただきました。 ■ SAKE DIPLOMAとは? 「利き酒師」や「酒匠」とは別の資格で、 利き酒師は日本酒サービス研究会・酒匠研究連合会(SSI)が主催し、 サービスや提供に強い資格。 一方、SAKE DIPLOMAは日本ソムリエ協会(J.S.A.)が主催する より理論的で国際的な知識体系を持つ資格 です。 ワインでいう“ソムリエ”の日本酒版、といったところでしょうか。 そんな資格を持つお二人が、今回は“日本酒の最先端の提供方法”ともいえる ペアリング に挑戦してくださいました。 実は札幌でも、本格的にペアリングを行っているお店はまだ多くありません。 ■ 日本酒とペアリングの関係 そもそもペアリングとは—— 料理と飲み物を組み合わせ、お互いの良さを引き出す技法 のこと。 ワインの世界では一般的ですが、 日本酒ではごく最近になって、少しずつ広がってきた考え方です。 なぜ今までなかったのか。 理由はとてもシンプルで、 日本酒の文化は “食と日常の真ん中に酒があった” から。 かつては、 料理に合わせて酒を選ぶのではなく、 酒が食卓にあり、料理が自然と寄り添う 世界でした。 だから「ペアリング」という言葉が必要なかったのです。 ■ 現代におけるペアリングの価値 しかし今の時代は、お酒離れや原料米高騰など、 飲む価値観そのものが変化している時代。 そんな中で「どう楽しんでもらうか」が問われ、 日本酒の世界でもペアリングが注目され始めています。 特に飲食店では、 この技術を取り入れることで 他店との差別化 が可能になります。 今回のSAKE DIPLOMAのお二人も、東京で最先端のペアリングを体験されてきた方々。 私も「つきや酒店」の知香良君や、 ペアリングで有名な「MAEN」さんで多くを学ばせてもらいました。 (MAENのInstagram) 未来の酒づくりのヒントが隠れているかもしれない。 そう思うと、こちらも体験せずにはいられません。 ■ ペアリングは“日本酒のフルコース” 単に酒を合わせるだけではなく、 温度帯を変える、酒器を替える、 時には出汁・スープ・お茶を“割材”として使う—— お酒そのものに料理のような手をかけていく世界です。 この発想の豊かさこそ、ペアリングの面白さ。 正直、福司や五色彩雲は“クセツヨ”ではないので インパクトを出すペアリングは難しいかもしれません(笑) ただ、逆に言えば 特徴を丁寧に分析して料理を当てていく余白がある。 今回の会でも、 「お酒の可能性はまだまだ広がるな」と感じました。 札幌でも珍しいレベルのペアリングを、 釧路で体験できるようになる日が来たら面白いですね。 ■ 日本酒の“ひと手間”が未来を変える 高価で有名な酒を取りそろえる店も多いですが、 酒質の幅は案外狭くなりがちです。 どれも純米大吟醸など同じ方向性になることも。 けれど日本酒は、 ひと手間加えるだけで味が劇的に変わる酒。 これは料理と同じで、工夫が価値になります。 今回の会を通じて、 また違う日本酒の面白さに気づくきっかけになればうれしいですね。 ![]() 過去を想い、未来を仕込む。 北海道白糠町の「極寒ぶり」と 釧路市の地酒「五色彩雲」が100年先の食文化を共創 」」」」」」」」」」」」」 SNS情報 」」」」」」」」」」」」」」 ● 福司酒造 製造部(公式)Twitter: @fukutsukasa_ ● 醸し屋のInstagram : @fukutsukasa.kazuma ■五色彩雲ブランドページ URL:https://goshiki-no-kumo.com/ ■五色彩雲Noteページ URL:https://note.com/goshiki_no_kumo ![]() ■ 採用情報はコチラから 五色彩雲シリーズのお取り扱い店舗はコチラからどうぞ。 |
| 2025.11.19 |
現場はこう動きました。
ゆっくりと、でも確実に作業が増えてきました。
福司の新酒第一弾(12月12日発売予定)の仕込みも終わり、 蔵の中では今年最初の醪が、ようやく元気に動き始めています。 ただ、今年最初に入った米は“割れ”が多く、吸水管理には手こずっています。 しかも普段は割れが少ない品種なのに……と頭を抱えるところ。 米が割れているだけで吸水の入り方がガラッと変わるので、 設定する吸水率もその都度見直しが必要になります。 吸水は、蒸米の溶け具合にも直結します。 さらに麹の力とのバランスで発酵の進み方が決まり、最終的な味わいまで左右する。 たった数%の吸水の違いで、酒の表情が変わるのです。 ■「数字では溶けているのに、実際は溶けていない」という落とし穴 割れ米が多いと、物理的には溶けて見えるのに、麹による分解は追いついていない── そんな“数字と現場感覚のズレ”が起こります。 分析値だけを見ると、実態を見誤る危険性がある。 だからこそ、複数のデータを照らし合わせながら慎重に判断しています。 いまのところ、物理的な溶けは進んでいるものの、麹の溶けはやや遅れ気味。 待つという判断もありますが、溶けすぎれば粘性が上がって酵母の負担になる。 発酵とは、常に“攻め”と“守り”の見極めです。 さらに今年は、米の硬さから見るに高温障害の影も感じています。 米を触った瞬間に「ん? ちょっと違うな」という感覚です。 ![]() ■一方、新しい挑戦のほうは順調 ただし、試験的に取り入れている新しい技法のほうは、良い手応えがあります。 しぼりたて生酒では、酵母の動きがよく、香りは華やか。 狙っていた方向に素直に進んでいて、思わずニヤッとしたくなる結果です。 ■北の錦の醪も、いい香りをまとってきた 北の錦の醪も順調そのもの。 香りはバナナミルクのように甘く柔らかく、 「これは良いお酒になるぞ」と期待がふくらむ仕上がりになっています。 香りを残すため、最高品温はあえて上げすぎず、 長めの発酵ができる温度帯にコントロールし始めました。 こういう繊細な調整が、最終的な酒質に効いてきます。 搾りはまだ先ですが、想像するだけでワクワクしますね。 良い酒に育ってくれるといいなぁ、と醪の前でつい願ってしまいます。 ![]() 過去を想い、未来を仕込む。 北海道白糠町の「極寒ぶり」と 釧路市の地酒「五色彩雲」が100年先の食文化を共創 」」」」」」」」」」」」」 SNS情報 」」」」」」」」」」」」」」 ● 福司酒造 製造部(公式)Twitter: @fukutsukasa_ ● 醸し屋のInstagram : @fukutsukasa.kazuma ■五色彩雲ブランドページ URL:https://goshiki-no-kumo.com/ ■五色彩雲Noteページ URL:https://note.com/goshiki_no_kumo ![]() ■ 採用情報はコチラから 五色彩雲シリーズのお取り扱い店舗はコチラからどうぞ。 |
| 2025.11.18 |
私たちが“チーム福司”になっていくまで。
先週末、SAKEstreetさんに掲載いただいている
福司酒造の「酒蔵だより」をご紹介しました。 AIの時代になっても、元となる“データ”が必要です。 そのデータとは、言語化された文章や、写真・動画として Webに残していく記録のこと。 ブログやnote、そしてこうした記事のひとつひとつが、 未来へつながる資産になると考えています。 そんな中、先日SAKEstreetの木村咲貴さんが釧路に来てくださいました。 木村さんは、日本と海外でジャーナリズムを学び、 現在も仕事の傍ら大学院で酒づくりを学ぶ“世界視点”の日本酒ライター。 地酒は、その土地に来てもらわなければ伝わらない部分があります。 気温、気候、光、湿度、食文化──すべてが酒の背景であり、 福司を語るうえで欠かせないファクターです。 今回、実際に釧路の空気を感じてもらい、 沈む夕日の色や、釧路の食文化を体験していただいたうえで 福司と五色彩雲の記事を書いていただきました。 私自身が発信している内容とは異なる、 “第三者の視点で見た福司・五色彩雲”が言葉になっていること。 それを読んでもらえるのが、何より嬉しいです。 よければ、私の書いた記事と合わせてお楽しみください。 ![]() 記事はこちら≫≫ 100年先の日本酒を見据えて。地酒も地域と共に変化する - 福司酒造(北海道・釧路) @SAKE_Street_JPより 酒蔵というと、伝統や歴史ばかりに注目されがちですが、 地元の酒蔵が“釧路を大事に思いながら”、 その変わらない気持ちのまま東京や世界に向けて発信していることを、 もっと地元の方にも知ってほしいと思っています。 「釧路は何もない街」と言う人もいます。 けれど実際は、その逆です。 整って用意されていないだけで、 素材そのものは驚くほど良いものがゴロゴロ転がっている。 気づけるかどうか、掘り起こせるかどうかは、 結局のところ私たち次第です。 パッケージされたものでないと魅力を感じられない“大人”になるのではなく、 自分たちで気づき、拾い、活かしていく地域でありたい。 地酒は、その小さな気づきを灯す存在でもあるはずです。 だからこそ、地酒を通して釧路という街を肯定的に、前向きに伝えていきたい。 それは福司が担う、大きな役割の一つだと思っています。 そして最終的には、 釧路という場所に、福司を体験しに来てほしい 私たちの目指す究極の姿は、そこにあります。 ![]() 過去を想い、未来を仕込む。 北海道白糠町の「極寒ぶり」と 釧路市の地酒「五色彩雲」が100年先の食文化を共創 」」」」」」」」」」」」」 SNS情報 」」」」」」」」」」」」」」 ● 福司酒造 製造部(公式)Twitter: @fukutsukasa_ ● 醸し屋のInstagram : @fukutsukasa.kazuma ■五色彩雲ブランドページ URL:https://goshiki-no-kumo.com/ ■五色彩雲Noteページ URL:https://note.com/goshiki_no_kumo ![]() ■ 採用情報はコチラから 五色彩雲シリーズのお取り扱い店舗はコチラからどうぞ。 |
| 2025.11.14 |
書き終えて気づいた、“言葉にすること”の意味。
昨日から東京よりライターの関ともみさんが釧路にお越しになり
福司について取材してくださっています。 北海道出身の関さんですが「だら燗」は初体験。 五色彩雲や福司の根源である地酒について 体験いただいてます。 SAKEstreetさんで酒蔵だよりを配信させていただきました。 今回は若手の夜明けを通して見えたこと 考えたことなどを記事にしています。 今回の記事は結構書くのが大変でした。 というのも9月に行われたイベントのことに触れながら 自分の考えを言語化するという部分が大変で 何を伝えるべきなのか、何を書き示すべきなのか 悩みながら書かせていただきました。 商品のこととかは何度もアウトプットしていることなので 割とすんなりかけるのですが 自分の中でも揉み切れていない部分を書くのは ある意味、自分の中から生み出すようなイメージ。 おかげさまで、書き進める中で少しずつ頭がクリアになり 見えてきた部分もあります。1度目の時には見えなかったものが 2回目の参加で見えてきました。 どの酒蔵も試行錯誤して新たなお酒を生み出しています。 単に美味しいだけではなく、各蔵の考える挑戦が詰まったイベントで お酒を飲みに来る人だけではなく、私たちにとっても発見があります。 イベントを終え、作り手たち同士がお互いをねぎらい 仕込みや技術の話をする場もこのイベントの特徴。 「どういうところにこだわりを持っているのか?」 お互いの哲学をぶつけあったり 今の業界の話を共有したり、 イベントでのお酒の販売よりも 実は大事な時間だったりします。 同じ時代に課題と向き合い 違う形で自分たちなりの解を探す。 どの蔵のやり方も正解で どの蔵の哲学も間違いはない 互いにぶつけ合い、また1年自分たちの日本酒つくりに向き合います。 今回の記事の中で伝えることの重要性にも触れていますが SAKEstreetさんで記事を書くことも知ってもらうきっかけの1つ 福司を知らない方がたまたま違う蔵の記事を読んでいて そこから知ってもらうってこともあるでしょう。 機会を作ること、そして蔵のことや釧路のこと 作り手のことを知ってもらうきっかけになればと思います ![]() SAKEstreet 【酒蔵だより:福司酒造】 北海道の“地酒”の再定義 - 「若手の夜明け」で見つけたもの これからの時代はAIが活躍すると思います その時に参考とされるのがデジタル化されたデータ。 蔵のことを言語化したものをAIが拾って アウトプットしてくれる。 だからこそAIの元データとなる言語化が必要になってくると思っています。 ブログという書き溜めたデータも役立つかもしれませんし 今回の記事や、これから書かれる記事も重要な役割があると思います。 そう考えると言語化をすることがこれからの酒蔵には必要になってくるかもしれません。 ![]() 過去を想い、未来を仕込む。 北海道白糠町の「極寒ぶり」と 釧路市の地酒「五色彩雲」が100年先の食文化を共創 」」」」」」」」」」」」」 SNS情報 」」」」」」」」」」」」」」 ● 福司酒造 製造部(公式)Twitter: @fukutsukasa_ ● 醸し屋のInstagram : @fukutsukasa.kazuma ■五色彩雲ブランドページ URL:https://goshiki-no-kumo.com/ ■五色彩雲Noteページ URL:https://note.com/goshiki_no_kumo ![]() ■ 採用情報はコチラから 五色彩雲シリーズのお取り扱い店舗はコチラからどうぞ。 |







